三重県気候変動適応センター

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センター活動記録

2024.06.06

いま観光の現場で起きている変化(その3) ~海島遊民くらぶの活動と理念、エコツーリズム~

旅館海月 女将 
海島遊民くらぶ 代表 江﨑貴久

この記事は2023年9月15日に実施したヒアリングに基づき、
三重県気候変動適応センターが作成しました。

【海島遊民くらぶ】

海島遊民くらぶの活動と理念

 2001年に、友人ら有志とともにエコツアーを実施する海島遊民くらぶを立ち上げました。
 現在、海島遊民くらぶが提供するプログラムには、鳥羽の自然を体験する、旬を食べながらツアー、伊勢志摩を観る、クラフト体験の4つがあります。

海島遊民くらぶのスタッフの皆さん

 「鳥羽の自然を体験する」では、カヤックツアー、シュノーケリング、無人島探検、魚釣り等が楽しめます。
 「旬を食べながらツアー」は、漁村での町歩き、地域の産業や文化を楽しむつまみぐい、魚市場での入札体験、わかめ刈り等が出来ます。
 「伊勢志摩を観る」では、海女さんの信仰する神社「石神さん」へのお参り、神様にお供えするかつお節が作られるいぶし小屋の見学等が出来ます。
 「クラフト体験」では、貝殻や流木、波で削られ丸くなったガラス等を使って、ネックレス、フォトフレーム、キャンドル等を作ります。

カヤックツアー
わかめ刈り

 最近のプログラム利用者数は、2019年が5,000人、2022年が6,000人、ピークだった2021年が7,500人でした。6人のスタッフで、これだけの人数に対応できる背景には、地域との良好な関係があります。
 自前のスタッフ、自前の施設にこだわるのではなく、地域の協力を得ながら、事業を行っています。

 100人200人も入れるような規模の大きなレストランは、昼食時以外は席に余裕があります。離島に行けば、集荷センターがあって広いスペースがあります。伊勢湾フェリーも乗り場にある100人規模のレストランスペースを貸してくれる等、協力をしてくれます。そういう施設を必要な時に使わせていただくことで、クラフト体験等は実施できます。

 移動手段にしても、定期船で離島に釣りに行くとか、遊覧船を使うとかいろいろな方法があります。漁師さんは皆、自分の船を持っています。そこにお願いすれば、わざわざ、自前のかっこいいモーターボートを買う必要はないでしょう。

 そもそも、伊勢志摩の町並みや漁村、自然の景観が素晴らしい施設です。
 魚市場に行けば、水揚げされたばかりの魚が見られます。漁村には昔懐かしい町並みがあります。漁師や海女さんたちから海や漁の話を聴くこともできます。無人島にはほとんど手付かずの自然が残されています。

 海島遊民くらぶは、「お客さん」「自然」「地元住民」「自分たち観光事業者」の「4者に優しい」ことを理念として掲げています。地域の人たちの暮らしや自然を損なわないように注意しながら、無理のない観光を進めることが大切だと思います。

魚市場の見学

エコツーリズム

 私たち海島遊民くらぶが活動を始めた時、エコツーリズムという言葉は知りませんでした。私たちは、そういう概念とは関係なく、鳥羽の自然をはじめ、漁村の風景、地域の暮らし、文化、行事等の素晴らしさを意識しながら、ツアーに取り組んできました。
 それが、海島遊民くらぶの活動を続ける中で、エコツーリズム関係の表彰をいくつか受け、10年目には環境省のエコツーリズム大賞を受賞しました。

 当時、エコツーリズムのエコは、エコ=生態系という考え方が一般的でした。観光を楽しむ中で、自然の成り立ち、生き物と環境、生き物と生き物の関係を知ることがエコツーリズムの趣旨でした。自然だけが対象のネイチャーツアーでした。
 そのため、表彰を受けた一方で、エコツーリズム業界には、海島遊民くらぶの取組はエコツーリズムではないと言う人もいました。

 いまでは、自然だけでなく、街歩きや魚市場の見学等、地域の中で自然資源と密接につながっている産業や文化を体験する活動という私たちのやり方が広く定着してきて、日本型のエコツーリズムと呼ばれるようになっています。

漁村の街並みを散策

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