三重県気候変動適応センター

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2022.11.21

安全でおいしい水を安定して届けるために(三重県企業庁の取組)

三重県企業庁水質管理情報センター

【概要】
・三重県企業庁では、県内の市町に対して、水道水を提供する事業を行っている。
・ダムや河川で取水した水から、土砂や濁り(濁質)を取り除き、滅菌して水道水を作っている。
・水道水は、時代とともに、より安全でおいしい水質が求められている。
・気候変動の影響で一番のリスクは、渇水。その他、台風や大雨で、水道水を市町に供給する送水管等の施設が壊れることも懸念している。

県の水道事業の役割

 三重県企業庁では、県内の市町に対して、水道水を供給する水道用水供給事業を行っています。現在は、県内29市町のうち 18市町に対して水道水を供給しています。

 自前の水源だけで域内の水の需要を賄える市町もありますが、何らかの事情で水量の不足や新たな水源確保が必要となった際、財政面や技術面等の制約から単独で水道事業が行えない市町は、県に水道水の供給を要請します。この要請に対応する形で開始されたのが、県の水道事業です。

 市町は、水道用の水源として、古くから井戸水、地下水、伏流水を使用しています。県は、原則として、表流水である河川水、ダム水を水源としています。
 その理由として、地下水の大規模な取水は、地盤沈下を引き起こす恐れがあるからです。

 現在、地下水の取水が規制されているのは、三重県内では北勢地域だけですが、北勢以外でも県では表流水を利用しています。

水道水ができるまで

 県には、播磨(桑名市)、水沢(四日市市)、大里(津市)、高野(津市)、多気(多気町)の五つの浄水場があります。浄水場ごとに施設等について多少の違いはあるものの、水道水を作る基本的な過程はいずれの浄水場も共通しています。

 水質管理情報センターに隣接する高野浄水場を例にとって、水道水が出来るまでの過程を説明します。

 ダムや河川に設けられた取水口から取水された水(原水)は、沈砂池を経て、浄水場の着水井へ導かれます。

 高野浄水場では、君ケ野ダムを水源とする原水を、雲出川に設置された取水口から取り入れ、沈砂池で土砂などを取り除いた後、導水管で浄水場の敷地内に運びます。

 浄水場に運ばれた原水は、着水井、急速攪拌池、緩速攪拌池、沈でん池、急速ろ過池、塩素注入井を経て、水道水になり、浄水池に貯蔵されます。貯蔵された水道水は、調整池を経て、市町へ送られます。

 浄水場で原水から水道水を作るために行っているのは、大きく分けると濁り(濁質)の除去と滅菌という二つの処理です。

 濁りの除去には、ポリ塩化アルミニウム(PAC)を使います。滅菌には、次亜塩素酸ナトリウム(塩素)を使います。塩素には、水に含まれる鉄やマンガン等を酸化させて除去する役割もあります。

 PACは、急速攪拌池において注入し、急速攪拌池から緩速攪拌池へと水が流れていく過程で、水中の濁りを集めて、綿くず状のかたまり(フロック)を作り出します。攪拌する速度を段階的に緩やかにすることで、フロック同士を衝突させて大きくし、沈でん池で沈めて、急速ろ過池の砂の層でこしてフロックを取り除きます。

 塩素は、水道水を作る過程で複数回にわたって注入します。

 フロックを取り除いた水は、塩素注入井において、再び塩素を注入します。こうして出来上がった水道水は、いったん浄水池に貯められ、皆さんのところまで届くよう高い場所に作られた調整池から、送水管で各市町の配水池へ送られたあと、各市町により皆さんのご家庭に供給されます。

より安全でおいしい水道水へ

 水道水に求められる品質は時代とともに変化しています。
 塩素の注入も、昭和の時代と現在では変わってきています。

 昭和の時代では2回の注入が基本でしたが、現在は3、4回の注入に変わってきています。ただし、注入される塩素の総量はそれほど変わりません。

 塩素を注入することで発生するトリハロメタン等の物質を少なくするとともに、カルキ臭を抑えることを目的に、細かく分けて注入しています。

 水の濁りの程度をあらわす指標である濁度について、水道法が求める基準は濁度2度以下です。現在は、クリプトスポリジウム対策のため、ろ過後の濁度を 0.1度以下とすることが求められています。クリプトスポリジウムというのは寄生性原虫で、食物等を通して人の体内に入ると、腹痛を伴う下痢を引き起こします。

 クリプトスポリジウムには、塩素による消毒が効かないことから、水道水への混入を防ぐため、徹底した濁度管理が求められています。

 濁度が2度の水をガラスのコップに入れても、肉眼では濁りはほとんどわかりません。バスタブ等に大量に水を溜めると、ようやく色が付いているのがわかる程度の水が、濁度2度の水です。濁度0.1度以下の水道水を作るために、濁りを集めて固めるPACの量が増えているかというとそうではありません。これはPACの性能が上がったことも影響していると思います。

 かつては、水道水を作る過程で活性炭は使われていませんでした。現在は、県の五つの浄水場すべてで活性炭処理が行えます。活性炭は、水中に含まれる様々な物質を吸着し除去します。一例を挙げると、かび臭の原因物質があります。

 かび臭物質は、平成15年(2003年)の水道法改正までは、水質基準の対象ではありませんでした。かび臭のもとになる原因物質の基準は、平成15年(2003年)に20 ppt以下と定められ、平成19年(2007年)からは10 ppt以下に引き上げられました。

 水道水を利用する一般市民の皆さんからの要望と、それらを踏まえた法制度の改正により、さらに安全でおいしい水道水が供給されるようになっているということです。

水道事業にとってのリスク

 水道事業にとって最大のリスクは、水質汚染、漏水、渇水の三つです。

 水質汚染は、上流での事故や工場排水等によって引き起こされます。漏水は、地震や施設の老朽化等によって引き起こされます。

 最も気候変動が関係するのは、渇水です。
 過去40年間で 2回、厳しい渇水を経験したことがありました。近年の傾向として、水が不足しがちになってきたという印象はありません。しかし、渇水は、いつ起こってもおかしくないという危機感があります。

 渇水以外では、今後、気候変動が進行することで、過去に経験のない大雨や台風により取水する原水の濁りがひどくなることも考えられます。

 もし、濁りがひどくなったとしても、どのようにPACを注入すれば良いかについては、今までの高濁度処理からノウハウが蓄積されており、実際に水が濁ったとしても適切に対応することが可能です。

 また、別の対策として、大雨が予測されるような場合は、事前に必要分を取水しておくことで、一定の期間、高濁度の水を取水しないことも可能です。

 気候変動の別の影響として、雨量の減少や、夏季の気温の上昇により、悪臭の原因となる藻が大量に発生することも考えられますが、これに対しては、活性炭処理することで対応していきます。

中央制御室

 心配なのは、水道施設の損壊です。大雨や台風による風水害によって、取水口が壊れたり、土砂に埋まってしまい、取水が出来なくなることが懸念されます。

 また、水道水を運ぶ送水管は、市町をまたいで広がっています。送水管は、基本的には地下に埋設してありますが、河川等を横断する時には、水管橋といって、車や人が通る橋と同様、河川に建てた橋げたの上を通っています。風水害によって、水管橋が倒壊して送水が出来なくなることも大きな懸念材料です。

 気候変動が今後進むことにより、三重県の気候がどのように変化していくかは分かりませんが、自然災害による損壊が懸念される水道施設については、補強や改修を行っていく必要があり、計画的に施設整備を進めています。

 最大の脅威の一つである渇水について、県では長期的な視点に立ち、安定した水道水の供給のため、多様な水源の確保に努めてきました。しかし、実際に渇水が発生した際には、利用者に節水を呼びかけるしか対策はありません。

 このため、日頃から、浄水場見学等の機会を捉えて、水は大切な資源であるとの普及啓発を行うとともに、実際に自然災害が起きたことを想定して、市町等関係者と定期的に対応訓練等を実施しているところです。

水質管理情報センター
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