三重県気候変動適応センター

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センター活動記録

2025.02.26

「おいしい!の笑顔」を未来へ届けたい(その5)~気候変動が進むと心配なこと~

井村屋グループ

この記事は2022年12月7日に実施したヒアリングに基づき、
三重県気候変動適応センターが作成しました。
なお、一部記述内容について、2024年12月現在での時点修正
を加えています。

今後、気候変動が進むと心配なこと

 当社の製品には季節商品がたくさんあります。社内では、春夏のビジネス、秋冬のビジネスという言い方をしていますが、四季がはっきりしているほうが事業はやりやすいです。

 冷夏や、暖かい冬になると、事業には不利に働くと思います。基本的に暖かい冬は歓迎しません。
 あずきバー等の冷菓類について、業界では「冬アイス」という言葉があります。冬の冷菓類の市場規模は夏よりはずっと小さいですが、一定の売り上げがあります。これが暖冬でどう推移するかは分かりません。

 今後の気候変動を考えると、一番心配なのは台風の進路です。
 いままで、北海道は台風とは無関係という印象でした。それが、2016年には5個の台風が北海道に接近・上陸しました。小豆が不作だった2018年には3個の台風が接近・上陸しました。北海道を縦断するような経路をたどった台風もありました。

 夏に北海道へ台風が上陸すると、小豆の生産に悪影響が出ます。
 2022年は、台風が北海道を若干かすめて行きましたが、それほど大きな被害が出るような経路ではありませんでした。

 8月半ばから9月いっぱいまでの、1か月半が一番心配な時期です。
 小豆の花が咲いている時期に台風が来ると、花が散ってしまい、実を結ばないので収穫量が落ちます。
 うまく実が付いたとしても、収穫前に株が強風で倒れてしまうと、コンバイン等の機械での作業が難しくなり、収穫に手間がかかります。その間、小豆のさやが水に浸かったままでいると、豆が腐ってしまいます。

 また、契約栽培していても、自然に左右されるものですから、必ず契約した全量が買えるわけではありません。
 もし、契約先の収穫量が少なければ、契約した量の2割とか3割カットということはあり得ます。収穫量が契約量を下回れば、生産者は複数の契約先に対して同じようにカットして納入することになります。

 将来的に北海道からの小豆や玉ねぎの調達が難しくなったら、海外産のものを使うしかありません。現在はリスクヘッジとして、小豆も玉ねぎも海外産を一部購入しています。

 もしも、北海道から小豆や玉ねぎを調達できなくなるとしたら、その時には、特定の作物だけでなく北海道の農業全体が極めて深刻な状態になっているはずです。
 現時点での当社の判断としては、海外からの原材料調達へと大きく舵を切る必要はないと考えています。

 事業を取り巻く環境はこれまでも変化してきました。
 市場のニーズ、社会の環境意識の高まり、お客様の嗜好等、様々な要素が当社の進むべき方向を左右すると思います。なかでも、今後の気候の変化は、常に注意を怠らず、適切に対応していくべき要素だと感じています。

 当社が社会に向けて掲げるミッションは「おいしい!の笑顔をつくる」ことです。
 今だけでなく、未来の子どもたち、大人たちにも「おいしい!の笑顔」を届け続けるため、社会の変化、気候の変化を捉えながら、社会の一員として環境に配慮し、顧客の皆さまに愛される商品を安定して提供してまいります。

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