2020.08.25
ウミガメネットワーク三重の皆さんと津市の砂浜を測量しました。
ウミガメネットワーク三重は、伊勢湾沿岸のウミガメの保護に取り組んでいる市民活動団体です。
三重県四日市市から津市に至る伊勢湾沿岸の砂浜では、毎年、アカウミガメの上陸や産卵が確認されています。
近年、様々な原因により、伊勢湾沿岸の砂浜面積は減少しており、ウミガメの生息にとっては厳しい環境になってきています。
今年の春、気候変動による今後の海面上昇が、伊勢湾沿岸の砂浜にどの程度影響を与えるのか知りたいという相談が、ウミガメネットワーク三重から当センターに寄せられました。
この相談を受けて、6月22日早朝から、ウミガメネットワーク三重の会員の皆さんと一緒に、津市の阿漕浦海岸と御殿場海岸で、簡易的な方法で砂浜の測量を行いました。
測量場所と測量結果をまとめたものがこちらです。
(ABC三つの測量地点の位置、A地点の結果、B地点の結果、C地点の結果)
IPCC(気候変動に関する政府間パネル)が、2019年に公表した「海洋・雪氷圏特別報告書」では、海面水位について、次のとおり、述べられています。
- 世界の平均海面水位は、1902年から2015年の間に、0.16m上昇している。
- 21世紀に入って、海面水位の上昇のスピードは加速しており、20世紀の2.5倍に達している。
- 2100年には、海面水位は最大で1.1m上昇することが見込まれている。
ABC三つの地点における、満潮時の波打ち際(海岸線)からの高さは、最高でも1.7mしかありません。
測量結果を見ていただくと、水位が1.1m上昇すれば、今回測定した三つの地点のうち、AとBでは、満潮時には、ほぼすべての砂浜が水面下に沈んでしまうことになります。
Cについては、10mほど後退するものの、半分以上の砂浜が残るように見えます。ただ、ここは今年、海岸堤防工事が行われた場所で、近い将来、台風や高潮により砂浜の形状が大きく変わる可能性があり、AやBと同様に予断を許さない状況です。
実は、三重県が2016年に発行した報告書「三重県の気候変動影響と適応のあり方について」において、0.56m以上の海面水位上昇で、三重県の砂浜はすべて失われるとの記載があります。
しかし、今回、現場へ出て実測してみたことで、砂浜の消失について、今後、より実感を伴って、説明することができると感じました。おそらく、ウミガメネットワーク三重の皆さんも同様だと思います。
阿漕浦海岸、御殿場海岸は、アカウミガメの産卵場所であるだけではありません。浜辺には海の家が幾つも軒を連ね、潮干狩りや海水浴を楽しむために、県内だけでなく、関西方面からもたくさんの人が訪れる観光地です。
また、堤防のすぐ内側には、住宅や事業所が立ち並んでいます。
阿漕浦に隣接するヨットハーバー 海の家案内看板 営業中 堤防の内側には人家が立ち並ぶ 画面奥へ続いているのは堤防
津市の砂浜が失われることは、アカウミガメの生息だけでなく、海岸の生態系全体や、高潮被害、観光業やレジャーにも大きな影響を及ぼします。
今回のように、私たちの身近な場所で、気候変動がどのような影響を及ぼすか、具体的に確認し、広く周知していくことは、気候変動対策を推進する上で、とても大切だと考えています。
追記(2021年5月21日)
2021年3月16日放送の三重テレビ「Mieライブ」での「ミッションゼロ2050みえ」(※)の特集に、ウミガメネットワーク三重の米川会長が出演した際、この測量のことも紹介されました。
三重テレビ放送のご厚意により、放送当日の説明画像(A地点の砂浜断面)を提供いただきましたので、掲載します。
※ 三重県による「2050年までに県域からの温室効果ガスの排出実質ゼロを
目指す」という宣言。