三重県気候変動適応センター

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2023.04.10

鈴鹿サーキット ~年間を通して楽しめる一大アミューズメントステージであり続けるために~

ホンダモビリティランド株式会社 鈴鹿サーキット 設備環境課

気象により起きている変化

 鈴鹿サーキットの主な事業は、アミューズメントパーク、モータースポーツ、ホテル、交通教育センターの四つです。屋外での集客を伴うアミューズメントパークとモータースポーツは、気候の影響を大きく受けます。

 最近の気象の変化で気になるのは、夏の暑さと台風、急な豪雨です。
 台風は以前と比べると、発生してすぐに上陸してくるという印象があります。当然のことながら、台風は集客に大きく影響します。
 また、突発的に大量の雨が降ることが多くなっており、細心の注意を払い運営しています。

来場者向け対策

 夏の暑い中でも、来場者の皆さんに出来るだけ快適に過ごしていただけるよう、運営側としては、様々な対策を取っています。

 園内のほぼすべての通路には、熱をさえぎる塗装を施してあります。
 この塗装のおかげで照り返しが少なくなるため、来場者が感じる暑さを低減する効果は大きいです。一方で、遮熱塗装は、維持管理のコストが高いという問題点があります。場所にもよりますが、遮熱塗装は3年から5年というスパンで定期的な塗り直しが必要です。

 来場者向けに、最近、特に力を入れているのは、ミストの出る装置の導入です。大勢の方に涼んでもらうには、ミスト装置が一番効果的です。

 ミストが出る装置にも、設置場所や用途によって様々な種類があります。主に設置している場所は通路です。
 モータースポーツのエリアでは、大きな扇風機の後ろからミストが出る仕組みになっています。
 さらに、大きなレースがある時には、運営本部を設けて、様々な事態に対応できるよう、スタッフを増員します。熱中症等に備えて、医師や看護師等の医療スタッフも増員しています。

 来場者の側でも様々な対策を取っていただいています。
 近年の傾向としては、手持ちの小さな扇風機を持っている人が増えてきたと感じています。

 プールへの来場者に関して言うと、プールサイドで、家から持参したテントを使用される方が増えているため、テントエリアを拡張しました。また、プールに来ても、素肌を直接、太陽に晒さないよう、水着の上からラッシュガードを着ている方がとても増えています。

従業員向け対策と施設の対策

 従業員のユニフォームについても、暑い中でも快適に働けるよう、メッシュ生地のものに切り替えるなどの対策をおこなっています。

 鈴鹿サーキットで使用している水はすべて井戸水です。
 飲み水もプールの水もすべて井戸水を浄化して使っています。15年ほど前からは、省エネにも井戸水を活用しています。汲み上げた井戸水を大型空調装置の室外機に散水することで、最も暑くなる時間帯の使用電力を抑えて、ピークカットすることが出来ます。

 園内で、普段から水が溢れやすい等、風雨に対して注意が必要な箇所については、あらかじめ把握しています。大雨や台風接近が予想される場合は、円滑に排水できるよう、事前に掃除を行う等、大きな影響が出ないように備えています。

環境対策への追い風

 設備環境課では、園内に設置された様々な施設や機器が正常かつ適切に稼働しているか、定期的に見回りを行っています。

 空調施設は消費電力が大きく、少しでも無駄な電力消費が無いように気を配っています。フィルターの清掃は月1回を推奨していますが、夏前は空調施設への負荷が上がるので、月2回して下さい等と各部署にお願いをしています。

 暖房便座のチェックも重要です。鈴鹿サーキットのように広大な敷地を有する施設では、トイレの個室も何百という単位であります。冬には、温度設定を適正にするように、春から秋にかけては、間違いなくスイッチを切るようにチェックをしています。

 モータースポーツでは、社外の多様な関係者がレースにかかわります。
 特に、規模の大きなレースには、知名度が高く、社会的な影響も大きな関係者が数多くかかわります。近年、そうした関係者がこぞって、環境問題に積極的に取り組む姿勢を示すようになっています。これが、社外の他の関係者や当社のスタッフにも良い影響を及ぼしていると感じています。

将来の気候変化と鈴鹿サーキット

 今後、さらに、夏の高温化や短時間の強い雨の増加傾向が進んだ場合、雨による土砂災害、建物の浸水などが懸念されます。
 モータースポーツの来場者においては、熱中症になる方が増えるのではないかと心配しています。
 夏以外の季節について言うと、春と秋の期間が本当に短くなったと感じています。

 気候変動は、地球規模の変化であり、個々の事業者が取りうる対策には、限界があるかも知れません。
 しかし、鈴鹿サーキットとしては、将来の気候の変化について、幅広く情報を集め、適切に対策を取ることで、一年を通して、「子どもから大人までが楽しめる一大アミューズメントステージ」であり続けられるよう努めていきたいと考えています。

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