2024.09.26
森林を守り、林業を未来へつなげたい(その2) ~森林整備事業~
松阪飯南森林組合
この記事は2023年9月26日に実施したヒアリングに基づき、
三重県気候変動適応センターが作成しました。
森林整備 - 提案型集約化施業
現在、当組合が特に重要視している取組は、提案型集約化施業になります。林業で施業というのは、苗木を植えてから伐採するまでの多様な作業全体を指す言葉です。
小規模な森林での施業は経費が割高になり、事業として成り立ちません。
このため、近接する森林について、組合から複数の所有者に働きかけて、ある程度の広さの森林をひとまとめにします。このまとまった森林を団地と呼びます。団地の中に作業道の開設を行い、林業機械を活用した効率の良い間伐と搬出作業を行うことで、採算が向上します。
開設した作業道は、将来に向けた森林経営の基盤でもあります。
次回の伐採時には、すでにある作業道を活用できるので、森林所有者の収入アップにつながります。森林の価値も上がるため、森林所有者の経営意欲の向上にも寄与しています。
組合では、森林の管理委託事業も行っています。自分で管理が難しい方の森林を預かり、数年に何度か境界の巡視を行い、その状況を所有者へ報告しています。
その他、高所作業車を使用して、町中の人家に近接した危険木を伐採したり、高所作業車が使用できない箇所については、森林整備で培った技術を活かして人力で木に登り、上から順番に切り落としていく特殊伐採も行っています。
森林整備 - 季節毎の作業
森林での作業は、時期が決まっているものと、通年で行うものがあります。
主に2月~3月末ごろを目安に、山に苗木を植える植林作業を行います。
6月~9月前半にかけては、植林地に生えた雑草等を刈り取る下刈り作業を行います。
10月~2月にかけては、植林の準備作業として、地拵えと獣害防護柵の設置を行います。
地拵えというのは、苗木を植える場所に、伐採した木の枝や葉が残っていないよう、枝や葉を集める作業です。
枝等が残ったままだと、植林作業の邪魔になるだけでなく、その後の苗木の成長や下刈り作業の妨げになります。遠くから眺めると、地拵えの済んだ山は、集められた枝葉でたくさん横線が引かれたように見えます。
山に植えられた苗木は50年から60年間かけて育つ途中で何度か間引きをします。光が地表に届くようにして草や低木が生育しやすくするとともに、残された木の生長を促進して優良な木材を得るために行う、この間引き作業を間伐と言います。そして、最後に木を全て伐り出す作業を主伐(皆伐)と言います。
間伐には、切り捨て間伐と搬出間伐があります。
切り捨て間伐では、伐採を行った後に木材を搬出せずその場に放置します。
木材を搬出しても経費に見合うだけの収入が無く、結果的に赤字になってしまうからです。また、伐採した木の搬出作業がないため、木を倒す方向には制限がありません。この作業は一年を通して行われます。
一方、搬出間伐は、比較的林齢の高い森林について行うもので、伐採した木材を搬出して販売します。
伐った後の木材を利用する搬出間伐や主伐は、搬出作業を円滑に行うため、あらかじめ決めた方向に木を倒す必要があります。いずれの場合も作業は慎重に行われますが、搬出間伐や主伐は倒す方向に制限があるため、木が倒れる際、どうしても他の木と擦れるリスクが大きくなります。
このため、木の皮がむけやすく、虫が入りやすい梅雨時期を避けて行うのがこれまでの一般的な流れでした。ただ、近年は一年を通して木材の需要があるため、通年行う例も珍しくありません。
また、植林作業については、コンテナ苗・ポット苗の普及に伴い、植林できる時期が広がっています。
森林整備 - 林業機械の導入
以前は、チェンソーで伐採を行い、伐った木は集材機、林内車、ユニック付きトラックで搬出し、市場へ出荷していました。
現在は、土木作業に使用する建設機械にアタッチメントを付けた高性能林業機械が普及しています。基本となる車両は同じですが、作業をするアームの先端だけを取り換えることで、枝払い、玉切り、集材、集積等、異なる機能を持つ林業機械になります。
作業の一連の流れとしては、まず、林業機械が山に入れるよう森林作業道を開設し、チェンソーで伐採して、スイングヤーダやウインチ付きグラップルで集材、プロセッサ、ハーベスタで造材して、フォワダーで山土場まで搬出します。山土場というのは、枝を払い落して丸太になった木を集積する場所です。
山土場からは、グラップルでトラックへ積み込み、市場へ出荷するか、または、山土場において、グラップルを使用して製材業者別に木材を分けて、市場を通さずに直接製材業者に搬入するのが主流です。
林業の現場では、林業機械の導入の他にも様々な変化が起きています。
苗木や防護柵の資材は人力で山へ運ぶ必要があり、大変な作業でしたが、最近では大型のドローンを活用し山の各所に届けることで、人力作業の軽減を図ることができています。
また、以前は、伐採した山の中で枝を払い、幹のみを搬出していましたが、現在は枝を落とさずに搬出するようになりました。
枝や切り株もバイオマス発電の燃料になるので、搬出が困難でない限り、すべて搬出して利用する方向に変わってきています。木の枝が林内に残らないため地拵えの手間も軽減されます。