三重県気候変動適応センター

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センター活動記録

2024.10.15

森林を守り、林業を未来へつなげたい(その4)  ~さまざまな木材利用 きのこ栽培、CLT、バイオマス発電~

松阪飯南森林組合

この記事は2023年9月26日に実施したヒアリングに基づき、
三重県気候変動適応センターが作成しました。

木材利用 ― 中径木と小径木

 直径14センチから30センチの丸太を柱材や中径木と言います。中径木より細い直径4、5センチから14センチまでの丸太を小径木と言います。

 中径木と言われる製材用丸太については、過去には、せり売りを行っていましたが、現在はいくつかの取引先を選定し、そこに直送販売をする方向に変わっています。

 小径木と言われる細長い材については、森林が高齢化して適材が少なく、出荷量も減ってきていますが、入札による販売を行っています。
 小径木の中でも長さが5メートルを超えるものは、足場丸太とも呼ばれています。しかし、現在の建設現場の足場は金属製のものばかりで、実際に足場として使われることはまずありません。

 長さの短い小径木は短材とも呼ばれ、主に土木現場の杭に使用されます。
 小径木は水産物の養殖用のイカダにも使われています。イカダ用としては、県内だけでなく北海道や広島県等でも需要があります。変わったところでは、金沢市の兼六園で雪吊りの柱にも使用されています。

小径木杭材

木材利用 ― 菌床きのこの製造販売

 当組合では、きのこ栽培のための菌床ブロックの製造販売を行っています。
 菌床ブロックというのは、木を細かく砕いたチップ等を固めて、きのこの菌を植え付けたものです。

 クヌギやナラ等の広葉樹を細かく砕いてチップにし、きのこの肥料となる、ふすまや米ぬか等の栄養体を混ぜた後、一定の大きさに袋詰めをし、高温で雑菌等を処理した後、シイタケやきくらげの菌を接種してから、菌がブロック全体に回るよう一定の温度で培養します。培養日数やきのこが発生するまでの日数は、きのこの種類で異なります。

 組合では、この培養済みの菌床ブロックを生産者に販売をしています。
 また、自社でブロック製造ができる生産者には、チップの販売も行っています。

菌床ブロック

木材利用 ― 液体ガラス改質木材

 将来の事業展開を見据えて、組合では新しい技術にも取り組んでいます。その一つが「液体ガラス」による木材改質技術です。
 木材を液体ガラスに浸し、木の内部に浸透させることで、腐りにくく、色が変わりにくく、シロアリにも強い木材を作ることができます。人工的な薬剤を使用しない等、環境面でも優れた技術です。

 液体ガラス改質木材は、松阪市や隣接する多気町の公共施設で、野外ベンチやテーブル等に使用されています。また、鈴鹿サーキットにある立体迷路のアトラクション「ポタジェンヌ」では外壁材として使用されています。

鈴鹿サーキットのアトラクション「ポタジェンヌ」

木材利用 ― 需要と価格の変化

 昔の日本家屋は、柱や梁、床の間、床、天井に至るまで、あらゆる箇所に見える形で木材を使用していました。
 立派な大黒柱や、四方無地と呼ばれる四面とも節がない柱をふんだんに使った家屋は持ち主にとって誇りであり、ステータスでした。そのため、木材が良質で あればあるほど、価格も高値で取引されていました。

 しかし、近年は、すべてクロスを張って仕上げる等、木材を見せる部分がなくなっています。
 また、柱は集成材を使用、床は合板を張った上に天然の木材を加工した板材ではなく、新建材を使うようになってきました。

 こうした背景もあり、住宅向けの質の高い丸太や板材の需要が減少したため、これまで一番高く売れていた柱材等の価格が下がってしまいました。

 木材は品質や用途によって、A材からD材に分類されます。価格はA材が最も高く、B材、C材、D材の順に安くなります。
 合板や集成材に使用するB材と言われる丸太の需要は増えていますが、住宅や家具に使われる質の高いA材の価格に比べて単価が安いため、林業者の収益増にはなっていません。木材への需要の変化によって、森林から生産される木材全体の価格が下がってしまいました。

 今後、木材の利用を広げる方策として、国等も関与して、規模が大きな中高層建築物等を木材で作る取組が進んでいます。使われる木材はCLTと呼ばれています。
 CLTは、繊維の方向が直角に交差するよう複数の板を重ねて接着した巨大なパネルです。CLTは欧州で開発された素材ですが、現在は日本国内でも商業施設、集合住宅、小学校の校舎、市庁舎等で活用されています。

 三重県内では、中高層建築物はありませんが、CLTを活用した建築例がいくつかあり、今後の進展に期待をしています。

CLTを利用した建築物「CoCo CLT」 写真撮影:ナカサアンドパートナーズ
振動台実験 写真提供:一般社団法人日本CLT協会

木材利用  ― バイオマス発電

 当組合の近くにはバイオマス発電所が立地しています。
 当組合からも発電の燃料用に木材を納入しています。木材を販売する方法としては、組合が所有者から依頼を受けた山林から出た材を出荷するパターンと、所有者自身が市内に3か所ある組合に出荷するパターンの二つがあります。

 バイオマス発電所ができたことで木材の最低価格は下支えされています。現在、発電所には木材1㎥を7,500円で販売しています。この木材はD材です。
 全国的に見ると、バイオマス発電所への販売価格は、5,000円から6,000円が平均的なので、地域の林業を応援するという意味で、高く買っていただいていると受け止めています。それまでは、製紙工場に売っていましたが、1㎥で3,500円でした。
 以前は、売れ残る材もあったのですが、バイオマス発電所のおかげでそれは無くなりました。

 さらに、今まで売りようがなかった細かい枝葉や、タンコロと呼ばれる木の切り株も売れるようになりました。切り捨て間伐で伐採した木のように、搬出の経費と手間がかかり過ぎる場合は放置することもありますが、基本的に搬出できる木材はすべて売れます。
 そういった意味でバイオマス発電所があることは当組合にとって、プラスだと思っています 。

 バイオマス発電向けの間伐材

 ただし、バイオマス発電全般について手放しで賛成かというと、そうではありません。
 バイオマス発電の燃料として、パーム椰子の実からパーム油を搾ったあとのPKS(ヤシガラ)を海外から輸入して使用することもOKなのは、個人的にはどうかと思います。

 バイオマス発電所の数が多すぎるのも問題です。バイオマス発電の燃料として納入する木材は他に使い道のない木材です。供給量には限界があります。国内の森林からの供給量に対して、発電所の数が多いことが、全国でのバイオマス発電事業からの撤退や中止につながっていると思います。

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