2024.02.29
気温とニホンジカが御在所の自然を変えている(その2) ~春夏の変化~
御在所ロープウエイ株式会社
御在所岳の変化 四季
30年前に比べると、四季それぞれの長さが変化し、季節の始まりが早くなったことを体感しています。具体的には、花の開花時期、紅葉の期間、降雪の期間で変化が見られます。
景観的な変化としては、山上の木々がまばらになりました。以前は笹で覆われ、木々の上の方しか見えなかったのが、今は地面まで見通せて遊歩道のようになってしまいました。山上の笹の背丈が低くなり、同時に力強さが無くなったように見えます。また、ロープウェイから御在所岳を見渡すと、松が「松枯れ」した時のように、他の木でも見た目に茶色くなった木が増えていることも心配です。これは御在所岳のみの問題ではなく、鈴鹿山脈全体の問題だと思われます。
御在所岳の変化 春(花)
今年(2023年)はアカヤシオの当たり年でした。アカヤシオは御在所岳の春を代表する花です。当たり年には、山上一帯が深く鮮やかなピンク色に染まります。御在所岳は、国内でも数か所しかない、アカヤシオの群生地のひとつです。
さらに、今年はアカヤシオに続いて咲くシロヤシオも大当たりの年でした。アカヤシオは、まだ緑の少ない春の初めに咲きます。シロヤシオは、新緑の盛りに真っ白な花を咲かせるのでとても写真映えします。
あまりに美しいので、ぜひたくさんの方に見ていただきたくて、今年は御在所ロープウエイのウェブサイトに特設ページを設けました。
御在所岳に春の訪れを告げる花は、マンサクです。30年前は、3月下旬から4月上旬に山の中腹で咲き始めていましたが、現在は3月上旬に咲き始めます。
アカヤシオについても、見頃が5月上旬だったのが、現在は4月下旬になり、確実に花の開花は早くなっています。
開花時期の変化には、気温の上昇が関係していると考えています。
また、以前は山上で多く見られたアカモノは、年々減少し、5年程前に絶えてしまいました。
アカヤシオやその他の山野草についても全体的に数は減っています。気温の上昇が植物の生育を妨げる方向に働いていることと、ニホンジカによる食害が、個体数が減少している原因ではないかと考えています。
御在所岳の変化 夏(トンボ)
一般にアカトンボと呼ばれるアキアカネは、6月頃に田んぼで羽化し、7月8月の間は標高の高い涼しい場所で過ごします。御在所岳にも、夏になるとたくさんのアキアカネがやってきます。
以前は7月上旬に山上で確認されましたが、最近では6月中旬に山上で見ることが多くなってきました。
アキアカネの観察数は年々減っています。その背景には、ふもとの田んぼが太陽光発電施設に変わってしまったこと等による個体数の減少が挙げられます。
また、御在所岳では1971年から「アカトンボふる里さがし大作戦」と銘打って、アキアカネの行動範囲のマーキング調査を行っています。調査への参加者が減少していることも観察数が減っている理由の一つです。
過去には、福井県敦賀市、愛知県飛島村でのマーキングした個体の発見が報告されていますが、最近は発見の報告は途絶えていました。今年(2023年)、御在所岳以西では初めて、京都市でマーキングしたトンボが発見され、新聞等でも大きく取り上げられたことで、調査が活性化することが期待されます。