三重県気候変動適応センター

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センター活動記録

2024.03.01

気温とニホンジカが御在所の自然を変えている(その3) ~秋冬の変化~

御在所ロープウエイ株式会社

御在所岳の変化 秋(紅葉)

 御在所岳の紅葉は、ツツジの赤、ミズナラ、クスノキの黄色、常緑樹の緑で形成され、紅葉と聞いて思い浮かべる、一般的な、もみじの紅葉は湯の山温泉まで下がらなければ見られません。

 全国的には紅葉の時期は遅くなる傾向にありますが、御在所では逆の現象が起こっています。
 御在所岳の紅葉は確実に早くなっています。以前は11月初旬に山上で見頃と説明していましたが、現在は10月20日頃と案内しています。
 また、ふもとの湯の山温泉では、12月上旬に川沿いのもみじが真っ赤に染まりましたが、現在は、11月下旬にはほぼ紅葉は終わります。

 紅葉の仕組みについて調べてみたところ、落葉樹は、秋になって光合成の効率が低下すると、葉を維持するメリットが減少するため、葉を落とすようです。葉を落とす前に、葉に含まれる栄養素を幹や枝に回収する過程で、葉が赤や黄色に変わるのが紅葉だということです。
 秋の訪れが遅くなったので、その分、紅葉も遅くなったという説明になるのだと思います。
 一方、これとは逆に、春と夏に光合成が盛んに行われた年には、紅葉が早く始まるという研究結果もあるようです。御在所岳では、こちらのメカニズムが働いているのかも知れません。

御在所温泉の紅葉
秋から冬へ 山上の樹氷とふもとの紅葉

御在所岳の変化 冬(雪と樹氷)

 山上で初雪が観測される時期は、以前は10月下旬から11月中旬だったのですが、最近では12月に初雪を観測することが多くなってきました。雪質について、さらさらのパウダースノーが少なくなったという人もいます。

 降雪については、最近の5年間(2018~2022年度)では、記録的な大雪と、記録的な雪不足の両極端の現象がありました。2019年度、2020年度の冬はまったく雪が無く、2021年度、2022年度の冬は交通マヒが起こるような大雪に見舞われました。

 御在所岳には三重県で唯一のスキー場があります。スキー客は、過去のピーク時に比べると確実に減りましたが、底は脱出したと感じています。スキー教室は、いつも満員の盛況です。

 スキー場への来訪者数は降雪量に比例します。しかし、大雪に見舞われた年でも営業期間が長くなるわけではありません。実は、スキー場の営業期間は、以前からだいたい2月末まででした。3月に入るとスキー客が減ることが営業終了の理由でしたが、近年は雪が少なくなって営業が出来なくなっています。
 大雪の降った2021年度、2022年度も、3月には残雪はほとんど無くなりました。以前は、山上では4月中旬に降雪を記録した時もあり、ゴールデンウィークになっても、わずかに、雪が残っていました。それだけ、最近の3月の平均気温の上昇は異常だということです。

 冬に山上では樹氷を見ることができます。木の枝などに付着した氷が美しい景観を作り出します。
 樹氷は、冬型の気圧配置になり、日本海側より過冷却された水蒸気が、北西の風で運ばれ、御在所の木々にぶつかり発生する現象です。冷えた空気、水蒸気、風という三つの条件が整った時に、樹氷はできます。

 雪不足だった2020年度の冬には、例年より樹氷観測は少なく、大雪が降った2021年度、2022年度の冬には、例年より樹氷観測が多くなりました。樹氷についての長期的な変化の傾向については把握していません。

御在所スキー場
スノーシューを履いて山上を散策
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