三重県気候変動適応センター

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センター活動記録

2024.04.02

気温とニホンジカが御在所の自然を変えている(その5) ~ロープウェイの運行と観光への影響、まとめとこれから~

御在所ロープウエイ株式会社

ロープウェイの運行と観光への影響

 様々な気象条件のうち、ロープウェイの運行に最も影響が大きいのは風速です。
 御在所岳では山上に設置した風速計で、平均風速と瞬間風速を常時観測しています。ここ20年では、平均的な風速にはそれほど変化がないものの、瞬間的な突風の発生頻度が上昇する傾向にあります。このため、瞬間的な突風によるロープウェイの運転休止や運行内容の変更を行うことが多くなってきました。

 運行内容の変更というのは、運行するゴンドラの数を減らして、運行間隔をあけることを指します。ロープウェイ全体が受ける風の抵抗を減らし、監視する範囲を限定することで安全な運行を行うことができます。

 観光客で顕著に感じるのは、涼しい夏から紅葉の秋にハイシーズンが変わったということです。これは、御在所に限らず、上高地など他の観光地にもみられる現象です。このように変化したのは、レジャーの多様化で遊ぶところが増えたこともありますが、観光客が山や高原に期待する夏の涼しさが、期待したほどでも無くなったことも考えられます。

 御在所岳のふもと、ロープウェイの乗り場がある場所は標高400mです。確かに暑さが厳しい夏には、ふもとでは平地同様に暑いのですが、標高1,200mの山上は、現在も変わらず、夏でも涼しい別天地です。ぜひ、もっとたくさんの方に夏の御在所岳を楽しんでいただきたいと思っています。

まとめと御在所岳のこれから

 御在所ロープウェイは急峻な山腹をゆっくりと登っていくのが特徴です。
 標高が変わるに連れて、山裾から広がる伊勢平野の田園や街並み、工業地帯、伊勢湾、さらには遠く知多半島までも見渡す景色や、咲き誇る花、奇岩、紅葉、積雪など目の前の景観が大きく変わっていきます。ロープウェイに乗ること自体が、御在所岳の四季折々の自然に触れることと同じくらい、楽しく驚きに満ちた経験です。

 この美しい自然と景観が損なわれることがあってはならないと思うのですが、すでに述べたように、気温の上昇とニホンジカの増加に代表される環境の変化によって、御在所岳の四季や自然は大きな影響を受けています。
 変化は今も続いていて、将来、御在所岳がどのような姿になるのかとても懸念されます。

 御在所ロープウエイ(株)を含む三重交通グループは、サステナビリティ活動の一環として環境保全に取り組んでいます。2050年のカーボンニュートラルに向けては、電気バスの導入、使用電力の再エネ化でCO2削減に取り組んでいます。   
 御在所ロープウエイ(株)としては、駅舎等の照明設備を蛍光灯からLED照明へ取替え、省エネ化を進めています。

 また、山上では、NPO法人「森林の風(もりのかぜ)」とともに環境保全活動を行っています。県から許可を得て、御在所岳で採取したミズナラの種から苗木を育て、植樹することで、ニホンジカの食害等により損なわれた自然を少しずつ元の姿に戻す活動を進めています。
 これからも私たちは事業者として、また、一人の市民として、気候変動による影響を少しでも小さくするよう、温室効果ガスの削減に努めていきたいと考えています。

 ぜひ多くの方に御在所岳を訪れていただき、美しい自然と景観に触れるとともに、いま起こりつつある変化についても知ることで、気候変動を自分事として捉えていただきたいと願っています。

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