2021.01.25
高い水温でも育つ黒ノリ「みえのあかり」2019~2021
三重県水産研究所 鈴鹿水産研究室
黒ノリの養殖にとって最も重要な要素のひとつは、養殖を開始する時の水温と秋から冬に向けての順調な海水温の低下です。
黒ノリの種を網に付ける種付けの作業は、作業場で行う陸上採苗と海で行う海上採苗の二つの方法があります。海上採苗に適した水温はノリ養殖が可能となる23℃以下です。
岸近くで長さ数センチまで育てたノリ網を沖に張り直す沖出しは18℃程度から開始されます。
2019年秋から2020年春の黒ノリの漁期は、全国的に記録的な暖冬となりました。
また、2017年8月下旬から始まった黒潮の大蛇行は漁期を通して継続しており、伊勢湾では、高い気温と大蛇行による影響が相まって、高水温基調で推移すると共に顕著な異常潮位(高潮位)が発生しました。
このため、通常よりも高い位置にノリ網を張ることで、干潮時にノリ網が一定時間、外気に触れて、ノリが健全に育つよう調整を行う必要がありました。
県内の漁場のうち、海上採苗が行われている鈴鹿地区では、2019年は10月18日から種付け(海上採苗)が行われました。
2019年とは一転して、寒い冬になると見込まれている2020年秋からの漁期は、水温が順調に下がることが期待されます。
その一方、現時点(2021年1月19日)では、降雨が極端に少ないため、河川から流入する栄養分が不足することで、黒ノリの色落ちが心配されます。
2020年、鈴鹿地区では、10月16日に種付けが行われました。
グラフで明らかなように、年によってばらつきはあるものの、長期的には、高水温による種付け開始日が遅れる傾向が続いています。
三重県水産研究所が2010年に開発した黒ノリの新品種「みえのあかり」は高い水温でも良く育つとの評価をいただいていますが、県内すべての漁場で利用されているわけではありません。
黒ノリの養殖には、水温の他、栄養分や塩分濃度等が複雑に関係します。
今後も、三重県水産研究所では、生産者の方々と一緒になって、課題解決に向けた取組を進めていきたいと考えています。
註記:鈴鹿市漁業協同組合の矢田組合長から寄稿いただいたこちらの記事では、種付け開始日に
ついて、2018年は10月15日、2019年は10月22日、との記載があります。
鈴鹿地区は下箕田、若松、白子の三つの漁場の総称です。10月15日(2018年)、10月22日
(2019年)はともに矢田組合長が操業する下箕田での種付け開始日です。