2020.05.20
地域防災力の向上をめざして
三重県・三重大学 みえ防災・減災センター
■ みえ防災・減災センターとは
近年、全国各地で地震や台風、豪雨などの自然災害が多発しています。三重県においても2011年の紀伊半島大水害や2017年10月の台風第21号による被害が記憶に新しいところです。
地震については、三重県は、近年大きな被害を受けていませんが、南海トラフにおける大規模地震発生の可能性は、確実に高まっています。
このように、大規模な自然災害の発生が懸念されていることから、みえ防災・減災センターでは、三重県における地域防災力の向上を目的とした取組を行っています。
■ センターの主な取組
みえ防災・減災センターは、2014年4月、全国に先駆けて、三重県と三重大学が共同で設置した組織です。現在は、県と大学の他にも、県内の3市と津地方気象台から職員を受け入れており、行政職員と大学教員が一体となって、「人材育成・活用」、「地域・企業支援」、「情報収集・啓発」、「調査・研究」の4分野を柱とした取組を行っています。
4分野について、風水害対策を中心にどのような取組をしているかその一例を紹介します。
① 人材育成・活用
三重県の防災・減災活動を担う人材を育成するため「みえ防災塾」応用コース、基礎コース(みえ防災コーディネーター育成講座)を開講し、気象、風水害の特徴、災害時の対応などの講座を実施しています。
受講修了後は「みえ防災コーディネーター」または「三重のさきもり」として認定する他、「みえ防災人材バンク」に登録し、市町・企業・地域等からの要請に応じて、適切な人材を紹介しています。
また、「公助」を担う市町職員向けの研修会のほか、医療や福祉に従事されている方、自主防災組織や学校防災のリーダーなど、日常の防災活動や災害発生時に活躍が期待される方たちを対象に、それぞれの立場に応じた様々な研修も行っています。
② 地域・企業支援
地域や企業、市町の防災取組を支援するための相談窓口を設置し、特に市町職員に対しては、情報共有の場(地域防災研究会)の運営もしています。
また、企業等の自然災害に対する被害の軽減・復旧の迅速化をめざすことを目的に、「みえ企業等防災ネットワーク」を運営し、事業継続計画(BCP)策定等、企業防災等に関する知識を習得するためのセミナーや交流会を開催しています。
③ 情報収集・啓発
県内で過去に発生した大規模災害に関する情報を、防災学習や防災対策、研究に活用できるよう、伊勢湾台風の体験談や災害の歴史資料等を収集し、「みえ防災・減災アーカイブ」として、インターネットで公開しています。
④ 調査・研究
年度毎にテーマを設定し、行政と研究機関が一体となった実践的な調査及び研究を行っています。風水害分野について、2018年度は、東紀州地域における台風等の進路が雨の降り方に与える影響や、2017年の台風第21号による浸水被害の発生原因についての研究を実施しました。
風水害に対する県内の地域毎の脆弱性を明らかにすることで、それぞれの地域で起こり得る風水害のイメージが「見える化」できるような調査研究に取り組んでいます。
■ 気候変動により増大するリスクについて
将来、気候変動によって、海面水位の上昇、大雨の頻度増加、台風の大型化がおこり、水害、土砂災害、高潮災害などが頻発・激甚化すると予想されています。
三重県は、県全体として見れば、比較的、大雨や台風に強い県だと思います。尾鷲から大台ヶ原山系一帯は我が国屈指の多雨地帯として知られ、尾鷲の年降水量の平年値は約4,000㎜にも及びます。
しかし、近年は、今までに降らなかったところに大雨が降るようになっています。今まで、記録的な大雨を経験していない地域にも、大雨を想定した取組を広げる必要があります。
また、県民アンケート等からは、個々の住民の防災意識は高いのに、行動には結びつかない現状も見えてきます。風水害では、避難しなければいけないと分かっていても、なかなか避難行動までには至らないという課題があります。地域の高齢化に伴い、避難したくてもできない方が増えているという課題もあります。
「自助」「共助」「公助」という言葉があります。「公助」は、行政による支援や対策を指しますが、「公助」を期待するだけでは、災害から身を守ることはできません。自らの安全を自ら確保し(=「自助」)、災害弱者も含め、地域ぐるみで助け合って災害に向き合う(=「共助」)ことが大切です。 気候変動等の影響によって、災害が激甚化するとすれば、「自助」や「共助」を促す防災リーダーを育成する防災・減災センターの役割は、ますます大きくなると考えています。