2020.03.18
ブリの稚魚モジャコの捕獲
三重県立水産高等学校
■ モジャコの捕獲実習
水産高校は三重県で唯一の水産に関する専門学科を持つ学校です。水産資源科3年生は、総合実習の授業の一環として、実習船「はまゆう」に乗って、熊野灘でブリの稚魚であるモジャコを捕獲する実習を行っています。
海には、速さの違う潮の流れがぶつかり合う潮目があります。潮目には、流れ藻と呼ばれる、ホンダワラなど千切れた海藻が帯状に漂い、モジャコは、流れ藻の下に隠れています。
実習では、すくい網を使って、モジャコを海藻ごと網ですくい取り、捕獲した数を確認しています。
■ 年毎に変化する捕獲数
実習は、毎年5月から6月の間に2回から5回ほど行います。年によって回数が違うのは、実習が天候に左右されるからです。
今年(2019年)の6月に行った実習では、モジャコが例年と比べて大きく成長し、網を入れても流れ藻から離れて逃げてしまうことから、モジャコを捕獲することができませんでした。これは、過去6年では初めてのことでした。
モジャコ
例年より稚魚が大きく成長していた要因としては、早期に産卵が行われ成長が早かったこと、モジャコの餌が豊富にあったこと、海水温が上昇していたことによりモジャコの成長が活発になったことなどが考えられます。また、これらが複雑に関係しあって、発生した可能性も考えられます。
これに加え、2017年8月下旬からは黒潮の大蛇行が発生しており、日本近海においても様々な影響を及ぼしていると言われています。大蛇行と、モジャコの分布と成長に何らかの関係があることも考えられます。
実習でのモジャコの捕獲数の記録が残っているのは、2014年度からの6年分ですが、その推移を見ても、明らかな傾向は見てとれず、今年のモジャコが例年より大きかったことの原因は明らかではありません。
■ 気候変動影響に対して必要なこと
今回の事象が地球温暖化によるものであれば、地球温暖化の進行によって、モジャコの分布や成長時期に影響が起き、当校の実習時期が早まる、捕獲場所が変わる等の影響があるかも知れません。
今後、地球温暖化による影響に対処するためには、影響予測が重要です。しかし、現状、地球温暖化による海洋生態系への影響について将来予測することは、簡単なことではありません。そのため、将来予測の精度を高めるためにも、海の変化を確認するモニタリングの実施が、重要になってくるのではないかと考えています。