三重県気候変動適応センター

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フィールドワーク

2020.03.12

夏の暑さに強い新しい米「結びの神」~研究者の視点から~

三重県農業研究所

■ 三重県の稲作

 三重県における米の生産は、コシヒカリやキヌヒカリなどの早生品種の作付けによる早期栽培が大半を占めています。これらの品種の登熟期(稲穂が出て、米が実っていく時期)は、7月中旬から8月中旬です。この時期に高温にさらされると、米が白濁し、外観品質が低下してしまいます。このため、近年、三重県産米の一等米比率は全国平均よりも低く、年によってばらつきがあるなど不安定な状況が続いていました。 

■ 新しい品種の開発

 三重県農業研究所では、2000年から、高温条件下でも米の外観品質が低下しにくく、食感や味も良好な新しい品種の開発に着手し、12年間かけて、2011年に「三重23号」として品種登録を行いました。

 三重23号は、登熟期に高温でも白未熟粒の発生が少なく、玄米の外観がきれいな品種です。

高温登熟性試験 温室内の高い気温での稲の生育を確認する

 収穫時期はコシヒカリよりも、1週間程度早く、収穫量は同程度です。草丈が短いので倒れにくく、いもち病に強いという特長もあります。また、噛むともっちりとした食感で食味もよく、冷めてもおいしい米です。

 市場において、三重23号をブランドとして確立するため、栽培および品質の基準を設けており、この基準に合ったものだけを、「結びの神」の名称で販売しています。

■ 新品種の県内展開

 2012年から県内の一般農家で栽培が開始されて以降、三重23号の作付け面積、生産量はともに順調に伸びています。夏季の気温のほか、台風の襲来、日照量の多寡など年毎に条件は違いますが、一等米の比率についても、一貫して高く、県内で生産される米全体と比較しても、明らかな差が見られます。

■ 気候変動影響の現状と将来リスク

 変わりつつある気候によって、すでに三重県の稲作は明らかな影響を受けています。今後想定される、夏季のさらなる気温上昇等に、どう対応していくかは大きな課題です。

 三重23号は高温対策に一定の成果を上げていますが、農業研究所では、将来を見据えて、現在も、高温登熟性に優れた新たな品種の開発に取り組んでいます。

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