三重県気候変動適応センター

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フィールドワーク

2020.03.17

夏の高温による授業の中止

松阪市立天白小学校

■ 夏の高温による授業中止

 2018年の夏は全国的に記録的な猛暑になりました。三重県内での熱中症による搬送者数は過去5年で最大だったと聞いています。
 天白小学校では、夏休みに入る直前の2018年7月19日と20日の午後の授業を急遽中止にしました。理由は、連日の猛暑による教室内の温度の高さです。

松阪市立天白小学校

■ 中止に至る経緯と学校の対応

 7月11日から急に気温が上昇したことで、授業に支障がないか見極めるため、各教室内の温度を職員室の黒板で共有するようにしました。当時、熱中症関係のニュースを頻繁に見聞きしたと記憶しています。
 通常の教室には扇風機があるだけで、エアコンはありません。週が改まった17日からは、教室に代えて、コミュニティ広場やコンピュータルーム等、エアコンがある部屋を活用して授業を行うことにしました。

 ただし、通常の教室以外の部屋を授業に使うには、いろいろと問題もあります。例えば、コミュニティ広場です。もとはランチルームとして使われていたため、広さは十分ですが、パーテーションで仕切っても、4クラスが同時に授業を行うと、どうしても他のクラスの授業の声が聞こえてしまいます。
 また、全ての学年が同時に利用できるほど、校内にエアコンを備えた部屋はなかったので、低学年の児童を優先しながら、各学年で順番に利用しました。

 翌18日も同様の対応をしましたが、19日以降も厳しい暑さが続くという気象予報だったため、18日に急遽、19日と20日の午後の授業中止を決定しました。保護者の中には、日中働いていて、仕事中はメールをチェックできない方もいますので、昼の休憩時間に読んでもらえるよう、午前のうちに一斉メールを配信しました。念のため、授業中止のお知らせプリントも作って、下校する児童に持ち帰らせました。

 急な授業の中止について、保護者から異論や反対はありませんでした。いただいたご意見は、「暑いから当然だ」、「この天気では止むを得ない」といったものばかりでした。それだけ、夏の異常な暑さについて、認識が共有されてきているのだと思います。

■ 学校における暑さ対策

 天白小学校では、夏の暑い時期には、教員に対し、体調のすぐれない児童がいないか特に注意するよう、また、こまめに水分を補給させるよう伝えています。
 給食には牛乳が付きますが、給食時以外の水分補給は、児童が家から持参する水筒の飲み物です。水筒の中身はお茶を推奨していますが、運動会前や夏の暑い時期には、保護者の判断でスポーツドリンクなども認めています。学校行事や授業などで学校の外に出かけることもあるので、その際は、必ず、赤白帽をかぶり、水筒を持っていくよう指導しています。
 また、個々の児童で、早い時間に水筒のお茶を飲み切ってしまうようなら、連絡帳で保護者の方にその旨を伝えて、大きな水筒に変える、予備の水筒を持参する等の対応をお願いしています。

■ 気候変動影響の現状と将来リスク

 幸い今年(2019年)の夏からは、すべての普通教室でエアコンが利用できるようになったので、来年度からは、夏の教室の暑さに関しては、それほど心配しなくても良くなりました。
 しかし、体育の授業は概ね外で行いますし、運動会や遠足など学校行事は、教室外で実施するものがいくつもあります。

 昔は、松阪市内のほとんどの小学校が10 月に運動会を開催していましたが、当校を含め、半分ぐらいの小学校では、残暑の厳しい秋を避けて、春に開催するようになっています。
 運動会は、開催当日だけでなく、事前に一か月程の練習期間が必要です。春に開催する場合でも、急な暑さに体が慣れていないため、熱中症にならないよう十分な配慮が必要です。
 今は、7月や9月だけでなく、一年を通して、気候が変わってきていると感じています。夏を中心に、明らかに暑い時期が長くなっているのではないでしょうか。

 また、夏の暑さ以外にも、強い台風や局所的な豪雨の発生、川の急な増水などが心配です。児童の登下校のことを考えると、どのタイミングで学校と家を行き来させるのが最善か、難しい判断を強いられることが多くなっているように感じます。実際、当校とは別の学区ですが、川の増水や氾濫、道路の冠水が大きな懸念材料になっている地域もあります。
 気候が変化することで、学校運営に及ぼすリスクは大きくなっていると思います。
 今後も気候の変化を踏まえ、様々に工夫しながら、児童にとって最も学びやすく、安全な学校運営を行う必要があると強く感じています。

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