三重県気候変動適応センター

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フィールドワーク

2020.03.19

春の女神・ギフチョウが暮らしやすい環境

名張市立薦原小学校

■ 春の女神と呼ばれるギフチョウ

 ギフチョウは、黒色と黄色のしま模様で後ろの羽には、赤、青、橙色の模様がある、アゲハチョウの仲間です。春の短い間だけしか、その姿を見ることができないことから「春の女神」と呼ばれています。

 成虫の時期が短いギフチョウは、春には雑木林のある里山や日当たりのよい植林地などに生えているカンアオイ類の葉に卵を産み、それを食べて幼虫は育ちます。幼虫はその後、地面に積もった枯葉の下等でさなぎになって、夏から冬を過ごし、次の年の春に羽化して、美しい姿を見せてくれています。

■ 減少しているギフチョウ

 ギフチョウは、三重県内においては、北勢地方の山地から丘陵、伊賀地方や中勢地方で生息していたそうですが、現在では伊賀地方の一部地域でしか見られず、名張市では天然記念物に指定されています。

 ギフチョウは、人の手が入った里山の環境で育つチョウです。開発によって里山が減ったことで、ギフチョウが生息できる環境は狭められてきました。

 開発を免れた里山も、その多くは、間伐が行われなくなったこと、木々の間に生えた雑草の下草刈りが行われなくなったことにより、ギフチョウの生息には適さない環境になっていきました。その背景には、燃料が薪や炭から石油等の化石燃料に変わっていったライフスタイルの変化があると思います。

■ ギフチョウを通じた環境教育

 薦原小学校では、ギフチョウについての学習を、ギフチョウの保全に取り組むNPO「伊賀ふるさとギフチョウネットワーク」の皆さんの協力を得て13年程前から行っています。2013年から開始したESDの取組でも、ギフチョウのことを中心に据えて学習を進めています。

ギフチョウの体の構造について学ぶ3年生の理科の授業

 3年生になると、まず、理科の授業でモンシロチョウを育てる他、様々な昆虫の特徴について学んだ後、3年生の終わりには、総合学習でギフチョウの生態等について学びます。

 4年生に進級した4月の初めには、学校近くの里山でギフチョウの観察会を行います。その後、なぜギフチョウが地元で生息できているのか、ギフチョウを守るために大切なことは何かを、自分たちの地域での暮らしと関連づけながら考える授業を行っています。

 また、その学習成果については、毎年秋に開催するコモコモふれあいまつりで、全校生徒、保護者の皆さんや地域の方々に向けた展示と発表をしています。

■ 気候変動影響の現状と将来リスク

 温暖化の影響からか、薦原小学校付近においても、桜の開花が早くなっていますが、ギフチョウが飛翔する時期も同様に早くなっていると感じています。

 ギフチョウの観察会は毎年4月の初めに開催していますが、桜の開花が早い年には、既にギフチョウを多く確認できるピークが過ぎてしまい、予定していた観察会の時にはギフチョウの数が少なくなっていることがあります。
 地球温暖化は今後も進行すると予測されています。その影響として、桜の開花が早まるのと同様に、ギフチョウの羽化も早まって、将来、観察会を開催する4月には、ギフチョウの飛び交う姿が見られなくなる可能性があると考えています。

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