三重県気候変動適応センター

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フィールドワーク

2020.04.14

松名瀬干潟に暮らす生き物の変化

学校法人三重高等学校 三重中学校・高等学校

■ 松名瀬干潟の観察

 干潟は、河口干潟、前浜干潟、潟湖干潟の3つに分類されます。三重県松阪市の伊勢湾岸に広がる松名瀬干潟は、その全てが揃っている、全国的にも貴重な干潟です。

 三重中学校・三重高等学校の科学技術部では、松名瀬干潟の存在をいろいろな人に知ってもらいながら守っていきたいと考え、松名瀬干潟のモニタリング、出前講座、体験学習など様々な取組をしています。

 特に、干潟に生息する貝類である4種類のウミニナ(ホソウミニナ、ウミニナ、ヘナタリ、フトヘナタリ)に着目し、毎月、個体数調査を実施しています。この10年間でウミニナの個体数に大きな変化は確認されていません。

 1年の間では、ウミニナの数は、夏に増えて冬に減少します。(ウミニナの産卵は初夏に行われます。春にも一定数の大きな個体が確認できるため、冬の間に多くのウミニナが死んで減少したとは考えにくく、冬に減少する理由は、ウミニナが地中深く潜るか、流されて他の場所に移動するからだと考えています。)

 モニタリングでは、ウミニナ以外の生物も記録しています。

 前浜干潟における2011年と2018年の採集記録を比較したところ、砂泥質を好むチゴガニやコメツキガニ、カワザンショウガイが採集できなくなり、砂質を好むマテガイが数多く採集されるようになっています。干潟自体を見ても、砂泥質であった干潟が砂質に変化していることは明らかで、生物の変化からもそれを裏付ける結果となっています。しかし、何故干潟が砂質に変化しているのか、その原因は分かりません。

 気候変動の影響が疑われる事例としては、南方系のカニである、ハクセンシオマネキが増えてきていることが挙げられます。10年間、松名瀬干潟の観察を続けてきた中で、5年前には、河口干潟の石堤付近で、まれにしか観察されなかったハクセンシオマネキが、最近は潟湖干潟でも確認できるようになっています。観察できる個体数についても、明らかに増加しています。

 また、今年(2019年)は干潟に生えるアマモが多く枯れました。アマモというのは、藻類ではなく、水中に生える被子植物です。アマモが枯れること自体は珍しいことではありませんが、例年、順調に生育していた場所で多く枯れました。水温が28℃を超えると、アマモは枯れると言われているので、これも気候変動の影響かもしれません。

 その他、観察を続ける中で、感じているのは地中の温度の変化です。干潟の生物を観察する際には、土を掘ります。土を掘っていると、以前は手がひんやりと冷たく感じましたが、この数年は深く掘らないと冷たく感じられなくなっています。

■ 在校生へのアンケート結果

 科学技術部では、在校生のうち、六年制コースの5年(高2)132名を対象に気候変動に関するアンケートを実施しました。

 自分自身が気候変動を感じたことがあるかという問いには、47%の生徒が、ある(少しある、を含む)と回答。いままでに、自分のまわりで気候変動を感じたと話した人がいたかという問いには、30%の生徒が、ある(少しある、を含む)と回答しました。

 気候(環境)変動に対して自分ができることは何か、という問いに対しては、対策を書くのではなく、自分が変動にあわせて対応(順応)するという答えが一定数ありました。

 対策としては、エアコンの適正な設定温度での利用、車を使わない(徒歩、自転車、公共交通機関の利用)、節電、省エネ、ごみの減量や分別、エコバッグの利用等の回答が数多くみられました。

 また、8名が、気候変動について知識を深める、調べるという回答を寄せ、中には、知識を深めた結果を、対策や周囲への働きかけに繋げるという回答もありました。

【科学技術部員からのヒアリングで出た主な意見】

(2019年10月21日 ヒアリング)

  • 家族や同級生と最近暑いという話はする。ニュース等で気候変動のことは耳にするが、具体的に何か変化が起きているよね、というような話はほとんどしない。
  • 以前は、エアコンを使用せずに寝られる日もあったが、今はそうではない。
  • エアコンを使用する時期は、6月からというイメージがあったが、5月にも使用することが多くなった。
  • 夜に昆虫採集に行くが、夜でも気温が下がらない。蒸し蒸しして寝られない。
  • アブラゼミが減り、クマゼミが増えている。
  • 彼岸花が彼岸の時期に咲かない。
  • 家に花壇や畑がある。以前はたまに水やりをすれば良かったのが、暑さで頻繁に水やりをしないといけなくなった。植物が暑さに耐えられないのではないかと心配してしまう。
  • 海の魚の種類が変化している。以前は、五ヶ所湾でオジサン(魚種名)が釣れたが、今は釣れない。  
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