2020.03.16
高温でも収穫可能なきのこ
三重県林業研究所
■ きのこ生産の現状など
三重県におけるきのこ生産額は、県内の林業産出額の1/3以上に達しており、林業全体の中でも重要な位置を占めています。
きのこの栽培方法は、大きく分けて、自然環境下で栽培する露地栽培と、温度や湿度を管理して栽培する空調施設栽培があります。量販店等で販売されているきのこの多くは、年間を通じて安定して出荷ができる空調施設で栽培されたものです。
しかし近年、夏場の気温が高くなり、空調施設の冷房にかかる経費が増加していることや、きのこの市場価格が夏場に低迷することから、夏季の生産を休止する生産者が見られます。
そこで、林業研究所では、商品性が高く、他のきのことの差別化が容易で、さらに比較的高温条件下でも発生が可能な新しいきのこを、安定的に生産できる技術の開発に取り組んでいます。
■ 高温でも栽培できるきのこの研究成果
取組の結果、これまでに、ウスヒラタケ、ササクレヒトヨタケ、タモギタケの3種について、高温条件下での生産方法を確立することができました。
ウスヒラタケは、その名のとおりヒラタケを薄くて小さくしたようなきのこですが、研究にあたっては、商品価値を高めるため、大型で日持ちの良い菌株を選抜し、発生試験を行いました。
その結果、空調栽培される主なきのこの発生温度が15℃前後であるのに対し、ウスヒラタケは20℃以上でも、良好な状態で発生が可能であることが分かりました。
夏場は、こうした高温でも栽培が可能なきのこを作り、冬場はナメコ等、低温下で栽培可能なきのこを作ることで、一年を通して、電気の消費量を削減しながら、きのこの空調栽培を行うことが可能になります。
また、ササクレヒトヨタケは、コプリーヌという名前でも知られ、イタリアなど欧米諸国では、高級食材として扱われています。味がさっぱりしていて美味しいきのこですが、日持ちがせず、流通に乗せるのが難しいという課題があります。
現在、ササクレヒトヨタケに含まれている機能性成分について分析を進めており、今後、さらに品質と機能性を高め、生産者と消費者に自信を持って勧められるきのことして、商品性を高めていきたいと考えています。
■ 気候変動影響の現状と将来リスク
きのこ栽培においては、温度と湿度管理は重要な要素であり、近年の夏日や真夏日の増加は、県内のきのこ生産に生産コストの増加などの影響を及ぼしていると考えられます。
さらに温暖化が進行し、夏日や真夏日が増加することになれば、きのこ栽培への一層の影響は避けられないと思います。シイタケ原木栽培については、森林総合研究所九州支所が中心となって実施した研究において、病害虫の増加や収穫量の減少等が危惧されることが報告されています。
林業研究所では、引き続き、きのこの栽培技術について研究を進めるとともに、適宜情報収集を行い、生産者等に情報提供などの支援を行っていきたいと考えています。