三重県気候変動適応センター

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2023.07.20

流域治水 ~気候変動を踏まえ、流域全体で取り組む治水へ

三重県農林水産部農業基盤整備課、農山漁村づくり課

 流域治水は、治水を担う河川管理者に加えて、河川の流域にある多様な関係者が治水に協力し、水害による被害をなるべく小さくしようという取組です。三重県の農業分野が関与している流域治水対策は、大きく分けて、利水ダム、田んぼダム、ため池、排水機場の四つがあります。

 県内の具体的な事例を紹介しながら、それぞれの対策の内容を説明します。

○利水ダム

 津市にある安濃ダムは農業専用の利水ダムです。ダムに蓄えた水はすべて農業用水として利用します。

 ダムの建設は国が行い、平成2年(1990年)に完成しました。完成からおよそ30年が経過しています。ダムは国が所有していて、国からの委託を受けて三重県が管理を行っています。

安濃ダム全景

 この安濃ダムについて、流域の水害を防ぐため、令和2年(2020年)8月、ダムの所有者である農林水産省の木曽川水系調査管理事務所、ダムの管理者である三重県の農林水産部、河川管理者である三重県の県土整備部、ダムの水を使っている中勢用水土地改良区、この4者で安濃川水系治水協定を結んでいます。

 この協定に基づいて大雨による水害の発生が懸念される場合には、事前放流を行います。

 一定量の雨が降れば、県土整備部から農林水産部に連絡が入り、その時点のダムの水位や今後の降雨予想等を勘案して、事前放流を行うかどうかを決定します。なお、協定を締結してから現在まで、事前放流を行うまでの降雨はありません。

 またダムには、常に上流から、土砂が少しずつ流れ込んでいます。このため、ダムには、ポケットと呼ばれる、土砂を溜める場所があらかじめ作られています。長い年月のうちに土砂がどんどん溜まっていくと、その分、貯水できる水の量が減ってしまいます。

 そこでダムの貯水量を回復するために、溜まった土砂を取り除く堆砂除去が必要になってきます。

 安濃ダムは、農業用水用の利水ダムであるため、年間で水が必要な時期は決まっています。このダムが空になった状態の時に土砂を撤去します。

ダムに溜まった堆砂の除去作業

○田んぼダム(田んぼへの雨水貯留

 お米を作っている間、田んぼに一定量の水が溜まるように、水の出口には水をせき止める板が入れてあります。この板の上に調整用の板(堰板)を追加すること等により、田んぼの畦の上の方まで水を溜めるのが田んぼダムです。

 大雨の際、普通の田んぼからは、どんどん水が川に流れ出ていきます。一方、田んぼダムに取り組んでいる田んぼからは、一時的に田んぼに雨水が貯留されるため少量の水しか流れていきません。一気に水が川に流れないように、流出のピークを抑えるのが、田んぼダムの主な役割です。

 堰板は、基本はずっと入れたままですが、代掻きや田植え、中干しをする時には、一時的に堰板を外す地区もあります。

 現在、三重県内では8地域で田んぼダムの取組が行われています。一番多いのは津市内で、他には松阪市内でも取り組んでいます。場所によって面積は違いますが、8地域というのは、三重県全体としては少ないと思います。

 田んぼに堰板を入れる作業は、田んぼを持っている個々の農家で行う必要があるため、なかなか進んでいないという状況があります。その一方で、全国的に流域治水の取り組みとして、田んぼダムを積極的に推進していきましょうという動きが出ているので、県としても何らかのPRをしていく必要があると思っています。

 田んぼダムの貯水量については、目安としての数字はありますが、明確に示すことは難しいです。

 田んぼに溜められる水の深さは、畦の高さから考えると大体30センチまでです。溜められる水の量は30センチ×面積なので、10町(約10ha)の田んぼなら最大3万㎥の水が溜められるということです。

 ただし、田んぼダムに取り組んでいる地区の中で、どれだけの田んぼに堰板が入っているか、もともとの水位がどこまであったかによって、実際の貯水量は変わってきます。また、畦の高さが30センチというのも、一般的な田んぼのことであって、田んぼによって高低があります。

 田んぼダムに取り組むことにより、水害から地域を守る、田畑や集落を守るという意味では大きなメリットがあります。

 一方、田んぼにたくさん水を溜めるということは、田んぼの畔に弱いところがあるとそこから畦が崩れてしまうので、そういう場合の補強対策をどうするのかといったことが今後の課題になってくると思います。

田んぼダム(画面中央下部に追加された堰板が見える)

○ため池

 ため池は、農業用水を確保するために、水を貯え取水ができるよう、人工的に造成された池です。

 三重県内ではため池が有する降雨時の雨水を一時的にためる洪水調節などの機能を活用する取組を行っています。

 一つは、農業用水としての利用が減少したため池の洪水調整池としての活用です。

 ため池の水を利用していたが、開発等によって、農地としての利用が減ると、水の需要も減少します。このようなため池について、あらかじめ水を抜いた状態にして、洪水を調整する機能を持たせて、洪水調整池として転用する事例があります。代表的な例としては、津市の野田池があります。

 もう一つは、ため池保全サポートセンターみえによる取組です。

 平成30年の西日本豪雨では、32箇所のため池が決壊する甚大な被害があり、その中にはため池の水が下流域に流れ出し子供が亡くなる被害もありました。この災害を踏まえて、ため池の適正な管理を進めること等を目的に、ため池管理保全法が制定され、全国にため池サポートセンターが作られました。

 ため池保全サポートセンターみえでは、普段から、ため池の管理者に対し、低水位管理をお願いしています。低水位管理というのは、ため池を低い水位の状態で管理することを指します。ダムにおける事前放流と同じ考え方です。台風等の雨が多い時期に備えて、あらかじめ、ため池の水位を下げておけば、雨が入ってきても、一定量まではため池に貯留できるという仕組みです。

 一方で、ため池を農業に利用している立場からすれば、水はどれだけでもあった方が良いので、それをただ下げてほしいといって、どこまで対応していただけるかは、難しいものがあります。県内には3,000を超えるため池があり、管理者は個人や水利組合等が大半を占めていますが、今後もサポートセンターからの声掛けを継続し、低水位管理に取り組むため池を増加していきたいと考えています。

○排水機場

 排水機場は、湛水被害を防止する施設です。

 大雨等で低地に集まってくる水による田畑湛水を防ぐため、排水機場に備え付けられたポンプを使って排水路や河川に強制的に排水します。農林水産部が所管する排水機場は、かつては農地を水害から守るための施設という位置づけでしたが、現在は、農業だけでなく、市街地・集落を含む農村地域における排水対策の一翼を担っており、流域治水を支える施設の一つと位置付けられています。

排水機場

 県の農林水産部としては、行政や農家等、農業分野に携わる様々な関係者が力を合わせ、これら四つの対策を地域毎の状況に即して活用することで、農業や農村集落、さらには県域全体での水害による被害の軽減に努めていきたいと考えています。

 《流域治水 ~気候変動を踏まえ、流域全体で取り組む治水へ 三重県県土整備部河川課 はこちら

 《流域治水 ~地域住民による田んぼダムの取組 清菅SHKクラブ はこちら

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