2023.01.21
流域治水 ~気候変動を踏まえ、流域全体で取り組む治水へ
三重県県土整備部河川課
治水政策の転換
平成30年7月豪雨や、令和元年東日本台風(台風第19号)など、近年、全国各地で豪雨等による水害や土砂災害が発生するなど、人命や社会経済への甚大な被害が生じています。
三重県においても、平成23年9月紀伊半島大水害をはじめ、平成29年10月台風第21号など甚大な被害が発生しています。
今後、気候変動の影響により更なる降雨量の増大が見込まれる状況を踏まえ、令和2年(2020年)、国は、従来の治水政策を大きく転換しました。
新しい治水の考え方は「流域治水」と言い、河川の改修やダムの整備等、河川管理者が主体となって行う治水対策に加え、集水域(雨水が河川に流入する地域)から氾濫域(河川等の氾濫により浸水が想定される地域)までを一つの流域として捉え、その河川流域のあらゆる関係者が協働して治水対策を行うことにより、流域全体で水害を軽減させようとするものです。
河川管理者以外が主体となって行う治水対策の例としては、利水ダムの事前放流、水田への雨水の貯留(田んぼダム)、ため池等の治水利用等が挙げられます。
流域治水プロジェクトの策定
国と県によって、流域毎に実施する流域治水対策の全体像を示した「流域治水プロジェクト」が策定されました。
国が管理する河川のプロジェクト(一級水系)については、国土交通省が主体となり、令和3年(2021年)3月に策定されました。県内では、木曽川水系、鈴鹿川水系、雲出川水系、櫛田川水系、宮川水系、淀川水系、新宮川水系が該当します。
県が管理する河川のプロジェクト(二級水系)については、三重県が主体となり、令和4年(2022年)3月に策定しました。
流域治水プロジェクトを策定することの目的は、三つあります。
一点目は、どのような対策をだれが(どの機関が)実施するのかを明確にすること、二点目は、対策の具体的なスケジュールをロードマップとして示すこと、三点目は、あらゆる関係者と協働する体制を構築することです。
三重県二級水系流域治水プロジェクトの特徴
三重県二級水系流域治水プロジェクトには、次のような特徴があります。
- 県が管理する河川(二級水系)は73水系192河川と数が多いため、建設事務所単位を基本に水系を10圏域にとりまとめ、圏域毎にプロジェクトを策定しました。
- 圏域毎の既存取組の整理だけでなく、圏域共通の新たな取組について今後の方向性を整理しました。
- 新たに田んぼダムやため池の貯留機能の向上など、農林部局との連携を重点的な取組に位置づけました。
- 都市部の道路における雨水桝の整備など、国や他県では対象としていない道路管理者の取組を圏域共通の新たな取組として位置づけました。
- 雨水をためて庭の水まきに活用する、大雨の時にお風呂の水を流さないなど、県民一人一人の身近な取組について今後、地域での広報を行います。
流域治水の取組は始まったばかりです。
より効果的で効率的な流域治水を実現するため、プロジェクトの取組内容については、流域のあらゆる関係者で構成される流域治水協議会において、毎年見直していきます。多様な関係者の理解と協力を得ながら、豪雨等による被害の軽減を目指したいと考えています。
《流域治水 ~地域住民による田んぼダムの取組 清菅SHKクラブ はこちら》
《流域治水 ~気候変動を踏まえ、流域全体で取り組む治水へ 三重県農林水産部農業基盤整備課、農産漁村づくり課 はこちら》